三井不動産㈱は7月11日、東京ミッドタウン日比谷8F「日比谷三井カンファレンス」において、ロジスティクス事業記者説明会を開催した。当日の説明には、本年3月に就任した同社執行役員 ロジスティクス本部長の篠塚寛之氏が登壇した。
説明会では、同社が今年4月に公表した新グループ長期経営方針「& INNOVATION 2030」のもと、策定された今後のロジスティクス事業の新事業戦略について説明した。
新事業戦略の内容は、以下の「三井不動産ロジスティクスパーク」新事業戦略の通り。近年物流業界では、ECの拡大とともに物流市場が拡大する一方、「物流の2024年問題」や深刻な労働力不足が課題となっている中、同社はロジスティクス事業における新事業戦略に基づきテナントや地域社会が抱える様々な課題解決に取り組み、不動産デベロッパーの枠を超えた「産業デベロッパー」として社会のイノベーション・付加価値の創出に貢献し、物流業界の持続可能な成長に寄与していく方針を明らかにした。
また、同社のロジスティクス事業はこれまでの開発・運営施設67物件に加えて、新たに8物件の開発が決定。開発施設は計75物件(国内66物件・海外9物件)、総延床面積は約600万㎡となったほか、竣工稼働施設は国内49物件・海外2物件・延床面積約400万㎡となり、累計総投資額は約1兆2,000億円に拡大していることを明らかにした。
●ロジスティクス事業の概要
物件数:国内:66物件 海外:9物件 計75物件(竣工稼働施設:国内49物件・海外2物件 計51件)
総延床面積:約600万㎡(竣工稼働施設:約400万㎡)
累計総投資額:約1兆2,000億円(2012年4月事業開始以降)
※2024年7月11日時点/今般発表の8物件を含む
●「三井不動産ロジスティクスパーク」新事業戦略
(1)ロジスティクス事業のさらなる成長
①地域一体型の「街づくり型物流施設」の開発推進
同社は豊かな街づくりに貢献するため、地域に開かれた広場や保育所を併設した「MFLP 船橋」のほか、職業訓練施設も入居する複合用途の「MFIP羽田」等、「街づくり型物流施設」の開発を推進している。
2024年9月末には、新たなフラッグシップ施設として、日鉄興和不動産㈱との共同事業による、都内最大の物流施設「MFLP・LOGIFRONT 東京板橋」が竣工する予定。災害時には、地域住民1,000人の緊急一時退避場所となり、敷地内に併設する高台広場は緊急着陸用のヘリポートとしても使用可能。さらに、ドローン飛行用のフィールドと賃貸用R&D区画を整備し、板橋区内における災害時に備えてドローンによる物資配送や災害支援活動の実証実験等を実施する予定。
また、労働力不足や雇用維持の課題解決に貢献すべく、当社施設従業員・トラックドライバーを対象に顧客満足度調査を実施しており、その結果を物流施設の施設計画や管理、運営等に反映することで働き手から選ばれる施設づくりに取り組んでいる。
②物流ソリューションの提案・提供によりサプライチェーン改革を支援
◎「MFLP &LOGI Solution」
2023年4月に発足した物流コンサルティングプラットフォーム「MFLP &LOGI Solution」では、50社以上のパートナー企業を擁する独自のネットワークを活かし、荷主企業のサプライチェーンの改革を支援するサービスを提供している。「MFロジソリューションズ」と国内ハウスビルダーが連携して行ったプロジェクトでは、物流コストを「見える化」し、将来計画も見定めた上で工場・倉庫拠点の集約や輸配送料金プランの見直しを行い、サプライチェーンの改革支援を進めている。
◎「MFLP &LOGI Sharing」
2024年4月より、EC事業者に対して「MFLP &LOGI Sharing」の提供を開始した。「MFLP船橋」内の「EC自動化物流センター」のシェアリングのみならず、注文受付や配送手配、在庫管理等のフルフィルメントサービスを担うことで、EC事業者の方々の成長を支援する。
そのほか、中継拠点構築ニーズに応える施設の開発・運営や、フィジカルインターネットサービスによる物流輸送網の構築に向けた取り組み等を通じて、荷主企業のサプライチェーン改革や物流業務の効率化をサポートすると共に「2024年問題」に対応していく。
※参考リリース
2024年4月19日ECブランドの成長を支援するプラットフォーム提供開始リリース
https://www.mitsuifudosan.co.jp/corporate/news/2024/0419_01/
2024年5月17日フィジカルインターネットの事業化に関する覚書締結リリース
https://www.mitsuifudosan.co.jp/corporate/news/2024/0517/
(2)多様化するニーズに対応すべく事業領域を拡大・多角化
①冷凍・冷蔵倉庫の開発
MFLP初となる全館冷凍・冷蔵倉庫として、「MFLP船橋南海神」(千葉県船橋市)、「(仮称)MFLP杉戸」(埼玉県杉戸町)の2物件の開発が決定した。今後も冷凍・冷蔵倉庫が集積している船橋エリアや厚木エリアを中心として全館冷凍冷蔵倉庫の開発を推進し、ますます拡大する食品ECや、チルド配送のニーズに対応するほか、2018年施行の改正オゾン法により定められている、自然冷媒への転換目標の達成にも貢献していく。
②データセンター事業の強化
生成AIや5Gの普及による更なる需要の高まりを捉え、データセンター事業を強化。既存の3施設に加え、新たに「日野DC計画」、「相模原DC計画」の開発が決定している。都心型データセンター、コロケーション型データセンターにも事業領域を拡大し、積極的にデータセンター事業を強化していく。
③工場・インフラストラクチャー事業への参入
同社では「MFIP羽田」をはじめ、倉庫・オフィス・ラボ等の産業活性化に寄与する複合用途施設の開発を進めてきた。2025年秋頃には、三井不動産グループの事業提案制度「MAG!C」から生まれたグルメプラットフォーム「mitaseru(ミタセル)」の製造拠点を「MFLP船橋」内に新設する予定。工場・インフラストラクチャーにも事業領域を拡大し、商品製造工場から保管、配送まで、一気通貫した独自のサプライチェーンを構築していく。
※参考リリース
2024年6月25日「mitaseru」新会社設立リリース
https://www.mitsuifudosan.co.jp/corporate/news/2024/0625/
(3)物流業界における先駆的な環境配慮の取り組みを推進
同社は太陽光発電設備の設置を推進し、オンサイトによるグリーン電力の供給や、テナントの要望に応じた専有部への「グリーン電力提供サービス」等、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを推進している。
2023年10月には、同社と三井不動産ロジスティクスパーク投資法人が保有する全施設の共用部供給電力の100%グリーン化を達成した。また、新築・既存全物件において、「DBJ Green Building認証」、各種「ZEB認証」または「arc」いずれかの外部認証を取得している。
さらに、2024年度中の着工を予定している「MFIP海老名」では、三井不動産グループが北海道に保有する森林約5,000haの木材を、構造材、および内装・仕上げ材に使用し、「植える→育てる→使う」のサイクルを回すことで、持続可能な森林経営による“終わらない森”創りにも貢献していく。