勝浦市商店街活性化推進協議会、千葉県勝浦市、㈱NEXT DELIVERY、㈱エアロネクスト、セイノーホールディングス㈱(セイノーHD)、KDDIスマートドローン㈱、住友商事㈱は1月18日、千葉県勝浦市で地域課題の解決に貢献する新スマート物流「SkyHub」(※1)のサービスを開始した。

勝浦市では、2021年から新スマート物流SkyHubの構築および社会実装に向けて推進しており、2022年2月のドローン配送サービスの実証実験を経て、2023年1月18日にお披露目式を実施した(22年度は1月18日から3月20日までの約2か月間、事業実施予定)。地域の商店と連携したオンデマンド配送・買物代行・フードデリバリーといったサービス展開における拠点となる「ドローンデポ」を、興津商店街との連携が取りやすい上総興津駅前に設営し、サービスをスタートする。お披露目式当日は各事業関係者が参加し、事業開始を見守ったとしている。

左より住友商事 航空事業開発部長の多々良一郎氏、セイノーHD執行役員の河合秀治氏、勝浦市商店街活性化推進協議会会長の小髙伸太氏、勝浦市長の照川由美子氏、NEXTDELVERY取締役/エアロネクスト執行役員の伊東奈津子氏、KDDIスマートドローン代表取締役社長の博野雅文氏(使用するドローンと。勝浦興津ドローンデポ前)
サービスを開始する勝浦興津ドローンデポ内の様子(勝浦市観光案内所の一部を使用)
配送出発するEVバン(勝浦興津ドローンデポ前)
千葉県勝浦市が検討する事業イメージ

今回、NEXT DELIVERYが勝浦市商店街活性化推進協議会から「新たな配送サービス構築による商店街等にぎわい創出事業」における商店街等ECモールサイト構築・運営及び共同配送業務、および商店街等ドローン配送導入業務を受託。上記関係各社の連携による同事業の実施を通じて、セイノーHDとエアロネクストが開発推進するドローン配送と陸上輸送を融合した新スマート物流SkyHubの導入および進化と、ドローン他用途を含むサービスモデルの開発を推進することで、地域の物流課題解決と勝浦市の活性化に貢献する。

勝浦市においては、地域の商店と連携したオンデマンド配送・買物代行・フードデリバリーといったサービスを展開しながら、今後、特急配送・オンライン診療/医薬品配送・高齢者配食/見守り・ライフセービング・防災といったサービスへの広がりを検討し、次の3点をテーマに事業を構築する。

(1)商店街等のにぎわい創出
商店街等の仕入れ/配送/出前といった物流業務を同事業で担い、ECサイト構築によりユーザーが商店街等の商品を注文しやすくすることで、商店の人手不足を解消し、各商店の売上増加や商店街等の商圏拡大に寄与。さらには観光サービスの促進により域外からの需要を拡大することで、商店街等のにぎわい創出を目指す。

(2)域内の物流効率化・最適化
物流人材不足、宅配荷物の増加、労働規制強化といった今後の障壁を乗り越えるべく、陸上配送を中心とした既存物流に空(ドローン)の物流を繋ぎ込むことで、域内ラストワンマイル配送の効率化・最適化を目指す。具体的には、配送非効率エリアへのドローンによる配送、複数の地域商店や物流事業者の荷物配送(共同配送)を実装していく。また、量子技術を用いた配送システム関連技術等の次世代技術による物流最適化の検証を進めている。

(3)地域のカーボンニュートラル推進
電動ドローンやEVバン等を活用することで、地域のカーボンニュートラルを目指す。加えて、CO2排出量削減への貢献のため、域内のヒトとモノの移動を合わせた貨客混載も検討する。EVバンについては、カーボンニュートラルを推進する住友三井オートサービス社(SMAS)からリース供給を受け、その中でSMASのテレマティクスサービス「SMAS-Smart Connect」を活用し、運行管理DX化や走行データの分析を通じて、さらなるカーボンニュートラルへ向けた取組みを検討する。

今後、勝浦市における課題やニーズに合わせた形でサービスを進化させるとともに、近隣都市を含む、より広域なエリアでの事業構築・社会実装、同様の物流・地域課題を抱えるエリアへの事業展開を目指すとしている。

●勝浦市におけるドローン配送について
ドローン配送にはエアロネクストが物流用途に特化してゼロから開発した可搬重量(ペイロード)5kg、最大飛行距離20kmの物流専用ドローン「AirTruck」(※3)が使用される。なお、2022年9月にエアロネクストと業務提携を発表したKDDIスマートドローンの「スマートドローンツールズ」(※4)を組み合わせたドローン配送パッケージ「AirTruck Starter Pack」(※5)として使用する。

当初は興津・上野エリアからスタートし、徐々に勝浦市全域に展開。安心安全で利便性の高いサービスを実現するべく、複数機運航、夜間飛行、レベル4といった高度な運航に挑戦していくとしている。

今回の高度な運航を実現するためにはエッジモジュールの信頼性や通信の安定が必要不可欠となり、AirTruck Starter PackのベースとなるKDDIスマートドローンの通信技術と運航管理システムを採用し、連携して進めていくとしている。

勝浦市大沢地区を飛行するエアロネクストの物流専用ドローンAirTruck
ドローン配送されたにぎり鮨が崩れていないことを見せる受け取った鈴木大沢区長(右)
配送された勝浦市商店街のにぎり鮨セットとお酒(大沢地区)

※1:SkyHub:エアロネクストとセイノーHDが共同で開発し展開する、既存物流とドローン物流を繋ぎこみ、地上と空のインフラが接続されることで、いつでもどこでもモノが届く新スマート物流の仕組み。ドローン配送が組み込まれた、オープンプラットフォームかつ標準化した仕組みで、ドローンデポを拠点に、SkyHubアプリをベースにした配達代行、オンデマンド配送、医薬品配送、異なる物流会社の荷物を一括して配送する共同配送等のサービスを提供する。SkyHubの導入は、無人化、無在庫化を促進し、ラストワンマイルの配送効率の改善という物流面でのメリットだけでなく、新たな物流インフラの導入であり、物流改革という側面から人口減少、少子高齢化による労働者不足、特定過疎地の交通問題、医療問題、災害対策、物流弱者対策等、地域における社会課題の解決に貢献するほか、住民の利便性や生活クオリティの向上による住民やコミュニティの満足度を引き上げることが可能になり、地域活性化を推進する上でも有意義なものとしている。

※2:ドローンデポ:既存の陸上物流とドローン物流との接続点に設置される荷物の集積・配送の拠点で、荷物をドローン配送できる仕組みを持つ倉庫。

※3:物流専用ドローン「 AirTruck」:次世代ドローンのテクノロジースタートアップ、エアロネクストがACSLと共同開発した日本発の量産型物流専用ドローン。エアロネクスト独自の機体構造設計技術「4D GRAVITYR」(※6)により安定飛行を実現。荷物を機体の理想重心付近に最適配置し、荷物水平と上入れ下置きの機構で、物流に最適なユーザビリティ、一方向前進特化・長距離飛行に必要な空力特性を備えた物流用途に特化し開発した「より速く より遠く より安定した」物流専用機。試作機は日本各地の実証実験で飛行し、日本トップレベルの飛行実績を持つ。

※4:KDDIスマートドローンの「スマートドローンツールズ」:ドローンの遠隔自律飛行に必要な基本ツールをまとめた「4G LTEパッケージ」に、利用者の利用シーンに合った「オプション」を組み合わせて利用できるサービス。「4G LTEパッケージ」は、全国どこからでもドローンの遠隔操作・映像のリアルタイム共有を可能とする「運航管理システム」や、撮影したデータを管理する「クラウド」、データ使い放題の「モバイル通信」の3つのツールをまとめて提供している。

※5:ドローン配送パッケージ「AirTruck Starter Pack」:日本発の物流専用ドローン「AirTruck」と、KDDIスマートドローンが開発したドローンの遠隔制御・長距離飛行を可能にするモバイル通信・運航管理システムを備えた「スマートドローンツールズ」によって構成されており、ドローンを用いた配送を行うにあたって高い経済性と安全性を兼ね備えたパッケージ。

※6:機体構造設計技術「4D GRAVITYR」:飛行中の姿勢、状態、動作によらないモータの回転数の均一化や機体の形状・構造に基づく揚力・抗力・機体重心のコントロール等により空力特性を最適化することで、安定性・効率性・機動性といった産業用ドローンの基本性能や物流専用ドローンの運搬性能を向上させるエアロネクストが開発した機体構造設計技術。エアロネクストは同技術を特許化し、4D GRAVITYR特許ポートフォリオとして管理している。4D GRAVITYRによる基本性能の向上により産業用ドローンの新たな市場、用途での利活用の可能性も広がる。