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ヤマト/シスメックス、遺伝子検査用試薬超低温帯輸送

2021/02/01

ヤマトホールディングス傘下のヤマトロジスティクス(株)とシスメックス(株)は2月1日、個別化医療(※1)のさらなる進展を視野に、低温~超低温帯の遺伝子検査用試薬(※2)の輸送におけるロジスティクスの実用化に向けて実証実験を実施したことを明らかにした。

同実験では、専用輸送箱を活用した混載輸送を前提に、GDP(※3)に準拠した品質管理およびコストに関する検証を行った。検証の結果、両社は2021年2月より遺伝子検査用試薬の輸送で、最適なロジスティクスの実運用を開始。混載輸送で-70℃以下での超低温帯における遺伝子検査用試薬の輸送は、国内で初の取り組みとなる。今後は-120℃の「超低温氷」(※4)を活用し、超低温帯でドライアイスを使用しない長時間輸送に向けた実証実験を共同で行う。

個別化医療は先端技術をより安全かつ有効に患者へ提供することで、医療の質の向上、適切な治療の実現を図るほか、医療費の適正化につながる医療としても研究およびインフラ整備が推進されている。ヤマトロジスティクスは15年以上にわたり医療機器や医薬品の流通に関する物流課題に、グループ内外の機能、ネットワークを活用し、調達から流通加工・トレース管理・配送など一貫したソリューションを提供してきた実績を持つ。また、今後の個別化医療の進展を見据え、課題の1つである超低温帯輸送における最適物流の検討を重ねている。

一方、臨床検査機器・試薬メーカーのシスメックスは個別化医療に重要な遺伝子検査用試薬を医療現場へ安定提供し、個別化医療の社会実装に貢献してきた一方、高度な品質管理を担保するため、遺伝子検査用試薬の輸送は物量を問わず専用便で輸送しており、高額な輸送コスト負担が課題になっていた。また、輸送の際に保冷のために必要となるドライアイスは石油精製の結果得られるCO2を使用しており、環境負荷や夏場の需要逼迫リスクの観点から改善に向けた施策を模索している。

両社はこうした課題解決に向け、今回、遺伝子検査用試薬における最適なロジスティクス構築に取り組むことにした。

●実証実験の内容
実施期間:2020年11月~2021年1月
輸送条件:超低温(-65℃以下)、冷凍(-20℃以下)、低温(2~8℃)の3温度帯での輸送
輸送場所:テクノパークイーストサイト(兵庫県神戸市、※5)から最終納品先(神奈川県川崎市)まで
評価検証
(1)オペレーション検証:GDPに準拠した輸送・品質条件の評価
(2)価格帯検証:実証実験をもとに現行コストとの価格評価
※上記に加え、ドライアイスを使用しない輸送を見据え、環境温度30度設定下で、ドライアイスに代わる-120℃の「超低温氷」の保冷能力を検証した。

補足
(1)事前準備・シスメックスへ梱包用内箱を納品
(2)シスメックスへ専用輸送箱(外箱)を持参し、ピックアップ
(3)遺伝子検査用試薬が入った梱包用内箱を専用輸送箱にセット、トレースを開始
(4)GDPに準拠し、エリアクリアランス(※6)を徹底
(5)最終納品先に配達、トレース情報、専用輸送箱を回収、専用輸送箱の管理

●検証結果
(1)オペレーション検証:GDPに準拠した輸送・品質条件の評価
テクノパークイーストサイトから最終納品先まで専用輸送箱での運用により、混載輸送でも各温度帯において適正な品質の維持を確認。また、冷凍ではドライアイスース、超低温では、ドライアイスの使用量を半分程度削減することができた。さらに超低温帯においては、-70℃以下での品質維持も確認することができた。

(2)価格帯検証 実証実験をもとに現行コストとの価格評価
従来、輸送のたびにシスメックスが要していた資材コストと高額な専用便コストに対し、ヤマトロジスティクスが必要に応じて的確な資材を提供し、引き取り、管理することで資材のムダをなくし、現行コストの低減が可能となった。また、-120℃の「超低温氷」の保冷能力検証では、冷凍・超低温ともに一定の温度帯を維持することができたため、ドライアイスを使用しない輸送の可能性を確認できた。
※超低温帯(-65度以下)は24時間の保持

●今後の展開
今回の実証実験で、複数の温度帯で高品質ト低コストなロジスティクスを実証できたことから、2021年2月より本格運用を開始する。

今後も引き続き、両社で経済性や効率性の向上を検討しながら、あらゆる温度帯においてドライアイスを使用せず、環境に配慮した長時間輸送の実現や、厳格な温度管理が求められる医薬品への展開など、社会的ニーズに応じたコールドチェーンの進化に取り組んでいく。

※1:患者1人ひとりの体質や病態にあった有効かつ副作用の少ない治療法や予防

※2:遺伝子検査に用いる体外診断用医薬品を示す

※3:医薬品が製造工場を出荷した後、医療機関に届くまでの流通過程における品質保証を目的にした基本的な指針

※4:(株)エイディーディー(静岡県沼津市)が開発したウルトラディープフリーザーで真水を-120℃に超低温で短時間で凍らせたもの。環境にやさしくドライアイス代用品として使用

※5:シスメックスにおける、生物由来原料の開発・生産と同原料を用いた体外診断用医薬品の生産拠点

※6:トラック庫内で混載はしても専用資材等で他の荷物と完全に区別して輸送している状態

●輸送フロー概要図

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