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日本気象協会、天気予報による省エネ物流研究で新たな成果

2017/06/08

(一財)日本気象協会は6月5日、天気予報で物流を変える取り組みとして2014年度から取り組んでいた「需要予測の精度向上・共有化による省エネ物流プロジェクト」の最終報告を発表した。

同プロジェクトは気象情報を使った需要予測データを元に生産量を調整するなどして、食品ロスの削減と、リバース物流(返品・返送・廃棄など)で不要に発生する二酸化炭素の削減を目指すもの。経済産業省「次世代物流システム構築事業費補助金」の採択事業として、2014年からの3か年計画で実施してきた。

最終年度となる2016年度では、メーカー(製))、卸売事業者(配)、小売事業社(販)が相互に協力して商品の販売計画や需要予測などをを協働して行い、欠品防止と在庫削減を両立させるCPFR(Collaborative Planning, Forecasting and Replenishment)の実証実験を実施した。

この実験では、相模屋食料(株)が販売する豆腐「なめらか木綿」を対象に、人工知能と気象予測を利用して小売店での需要予測を高度化し、小売店からの発注を納品予定日の前日から2日前に1日早めることが可能にした。これにより相模屋食料側では2日前から始めていた生産を「見込み」に基づくものから、小売店からの注文ベースに変更することができた。

その結果、小売店では発注を1日早めても機会ロス・食品ロスは発生しなかった。相模屋食料では、注文を受けてから豆腐の生産を開始するので、見込みと注文にギャップによる無駄な生産を解消できた。協会は「CPFRのオペレーションは実施可能であることが示された」と結論付け、もしCPFRを全国で生産されている豆腐へ適用すれば、計算上、豆腐の食品ロス約5,840tをほぼゼロにすることができるとした。

そのほか、需要予測モデルの高度化に関しても成果を得た。2015年度に引き続き人工知能(AI)技術を用いてSNS、POS、気象の各データの解析を行い、需要予測モデルの高度化を進めた。気象パターンを「寒い」「肌寒い」「快適」「暖かい」に分けて売り上げを分析した結果、気温が上がると厚切りの焼肉(炒め物)用の肉が売れ、気温が下がると薄切りの鍋用の肉が売れることが分かった。

また、人工知能に価格・曜日・気象要件を取り入れて機械学習をさせることで、売り上げの推定精度が0.7から0.87まで向上した。その結果、日配品の需要予測や日次の来店客数予測の精度が向上した。

協会こうしたプロジェクトの成果を元に2017年4月から「商品需要予測事業」を開始している。今後、食品業界をはじめとした「気象によるリスク」に直面するあらゆる業界を対象に、気象情報を元にした商品需要予測情報の提供および問題解決を支援するコンサルティングサービスを提供し、企業の「働き方改革」や「生産性向上」、「社会的責任(CSR)」を支援していく。

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