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JILSが新年賀詞交換会、ダイフクの北條社長が講演

2016/01/20

(公社)日本ロジスティクスシステム協会(JILS)は1月12日、東京・千代田区の経団連会館で新年賀詞交歓会を開催した。

開催前の記者発表会で川合正矩副会長は、ロジスティクスを取り巻く課題への対応について説明。「物流を取り巻く環境変化に的確に応えて行く必要がある」と述べ、「十分な対策が講じられなければ、物流の停滞と経済活動のボトルネックになる事態も想定される」と喫緊の課題に物流事業の担い手の確保と育成を示し、物流業界を魅力ある職場にするため、荷主企業とサプライチェーン全体に関わるステークホルダーと連携し、生産性向上、省力化、省人化で作業工程削減による負荷軽減が欠かせない」とした。また、一貫パレチゼーションをはじめとする物流プロセスの標準化にも触れ、「物流業界が刻々と変化する新たなニーズに的確に応えるために、国には社会資本整備を推進していただきたい。とくに港湾、空港、貨物駅の整備と、高速道路網や道路整備の促進の更なる加速をお願いしたい」と要望した。

橋爪茂久専務理事はJILSの2016年の重点活動と人材育成の方策について説明。需要と供給を同期化させるロジスティクスのあるべき姿を盛り込んだ『ロジスティクスコンセプト2020』に則って、とくに今年は積極的な提言活動に注力意向を示した。また、新設したロジスティクスKPI推進部会とロジスティクスIoT推進部会を通じ、「産学官の連携で議論を深め、将来のあるべき姿を描きつつ、企業間の課題解決のための方策の発信を行う」と説明。さらに、物流の共同化・協業化の促進、省エネ策の推進など、ロジスティクスの効率化に向けた活動を官民連携で推進することに触れ、今年9月に開催する国際物流総合展の告知を行った。

eコマースの進展に期待

記者会見後、580人を招いて実施した新春講演会「新春に想う―新しい物流システムの構築に向けて―」は、講師の(株)ダイフクの北條正樹代表取締役社長執行役員が、同社の事業変遷を中心に物流システムの将来像を示した。

北條氏は1958年にチェーンコンベアシステムからスタートしたダイフクのマテハン事業の変遷を説明。自動車関連の生産が海外にシフトする中、事業が成長しているeコマースのさらなる伸長に期待。また、「2015年度会計でも恐らく流通業界が右肩上がりを続けてもらえると思う」とオムニチャネルを展開する流通業への期待も示し、同業界の生産性向上に注力する姿勢をみせた。

eコマースについては、具体的に店舗から距離にして5マイル以内に居住する人が全米の人口の約3分の2という立地条件を活かしたウォールマートの例を挙げ、日本でも流通企業が既存店舗を活用したオムニチャネルが大きな流れになってくることを強調。一方で韓国、台湾など、地方に小売店舗が少ない場合は、ネット通販の拡大がより伸びていく状況であることを示した。

さらに、北條氏は輸入品を多く仕入れている100ショップ業界にも着目。「海外からの調達はスムーズな流れを確立できていない」と、同業界の効率の良い物流体系を支援する意向を示した。IoT、AIについては「色々な産業に変革をもたらすことが確実。とくにIoTは産業構造を変えるものとして期待される。生産、物流、販売、消費を繋げる有力な武器だ」とし。IoTを標準化する必要性についても述べた。

物流事業の今後について北條氏は、「新しい技術への取込みや消費ニーズの多様化など、様々なことが複雑に絡み合っている」とし、産学官共同で課題解決を進めることを要望。「人口減少、少子高齢化、環境保全、TPP、新しい物流システムの構築に取り組んでいかなければならない」とした。

国民生活を支える上でも物流の高度化は不可欠

新年賀詞交歓会の宴席で川合副会長は、「グローバルなサプライチェーンの効率化に向けたロジスティクスの高度化は、企業価値の向上のみならず、国民生活を支える上でより一層重要になり、国内物流とグローバル物流のシームレス化にはロジスティクスの統合管理が求められる」とあいさつ。「当協会は需要と供給を同期化させるロジスティクスシステムのあるべき姿を『ロジスティクスコンセプト2020』として取りまとめており、グローバルサプライチェーンの効率化と共にロジスティクスの統合管理の必要性を訴えていく」と、課題解決のために積極的に活動していくことを示した。また、ロジスティクスKPI推進部会、ロジスティクスIOT推進部会を新設したことを報告し、産学官連携で議論を深めながら将来のあるべき姿を描き、企業間の課題解決の方策を発信していくとした。

来賓の国土交通省の羽尾一郎大臣官房物流審議官は、JILSが取り組む荷主と物流の連携を評価。その例として「グリーン物流パートナーシップ会議」や労働不足に対処した「物流ロジスティクスの資格認定講座」などの各種人材養成を挙げた。また、今後の物流政策の基本的な方向性等について、昨年、交通政策審議会から答申があった『危機を乗り越え、自ら変わる、日本を変える~「物流生産性革命」と「未来に輝く物流への進化」へ協同~』について触れ、就業環境の改善なども連携して取り組んでいくことを示した。

経済産業省の松本年弘大臣官房審議官は、「経済の好循環は回り始めている」と景気回復の手応えを示したが、「軌道に乗せるためには賃上げと設備投資が不可欠」とした。また、物流事業に関わるIoT、ビックデータ、AI、ロボットなど新たな技術の進展に期待。具体的にはIoTを活用した在庫管理や納品、検品の効率化、AIによる配送ルートの最適化、ロボットによる積み下ろし作業の軽減などを挙げ、トラックの自動隊列走行、ドローンの活用にも期待した。

●(写真上)講演するダイフクの北條社長
●(写真下)講演会を聴講する参加者

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